オオイチモンジ
解説
梓川の河原に,一匹のチョウが颯爽と舞い降りてきた。一迅の風が草木をざわめかせ,そして静寂が訪れた。風も川の流れも,まわりの風景の中にあるすべてのものの動きがゆっくりとなり,そのチョウは水辺に降り立った。背後からそっと近づこうとした人間の気配を,いとも簡単に感づいて飛び立った彼は,頭上すれすれを旋回するように飛び,対岸のケショウヤナギの林の向こうに消え去った。中部山地では亜高山帯下部の針広混交林や河原などにすむオオイチモンジは,タテハチョウの中ではオオムラサキを凌ぐまさに“帝王”と呼ぶにふさわしい風格と美しさを備えている。1齢幼虫には,食べ残した葉の主脈の先端に糞をつなげて“塔”をつくる習性がある。成虫はあまり羽ばたかずに滑空し,湿地で吸水したり獣糞などで吸汁したりする。本州で一般に高山チョウと呼ばれる種の一つ。
Limenitis populi (Linnaeus)
キャッチフレーズ
北国の帝王
成虫
成虫 成虫
成虫 成虫
食樹:ドロノキ 生息地
分布 北海道,本州(中部地方以北)
年間の発生回数 夏1化
食草等 ドロノキ・ヤマナラシ
成虫の出現時期 6-8月
越冬態 幼虫
レッドリスト 絶滅危惧II類(VU)
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