FFPRI FluxNetの概要

背 景

地球温暖化を軽減するためには、化石燃料の使用と共に増加してきた大気中の二酸化炭素を、如何に減らすかが重要です。地球の二酸化炭素濃度を軽減する対策の一つとして、森林の二酸化炭素吸収能力を最大限引き出すことが期待されています。しかし、温暖化防止に関連した森林の取り扱い技術は十分に確立されていません。森林を評価・利活用するための十分な科学的知見を得ることが早急に求められています。

森林を構成する樹木の葉は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収します。その一方で、樹木は人間と同様に呼吸を行い、二酸化炭素を放出しています。さらに、林床からも、有機物の分解によって二酸化炭素を放出しています。したがって、森林の光合成による吸収量が、すべて森林に蓄えられるわけではありません。二酸化炭素吸収・放出のメカニズムは複雑なため、現在も、気候や森林タイプに対応した炭素循環のメカニズムの解明のための研究が、様々なアプローチで取り組まれています。

このような背景から、森林総合研究所では研究グループを組織し(森林総合研究所フラックス観測ネットワーク; FFPRI FluxNet)、日本国内6カ所(現在観測を継続しているのは5カ所)の試験地で、微気象学的手法による二酸化炭素フラックス測定を中心とした観測研究を行っています。

目 的

- 森林の二酸化炭素吸収量の評価と変動予測

- 森林-大気間の熱・水蒸気、二酸化炭素輸送過程の解明とモデル化

- モデル検証に向けたデータの収集 ・蓄積

さまざまな気候や森林タイプに対応した炭素循環のメカニズムの解明のため、森林による二酸化炭素吸収量の評価を正確に行えるよう、測定手法の改良を行います。さらに、観測研究を通じて、たとえば「森林が大気からどのくらいの二酸化炭素を吸収するか」、「それはどのようなメカニズムで行われ、予測するにはどうしたらよいか」といった問題を明らかにしていきます。

森林総合研究所フラックス観測ネットワークの構成

観測研究の主体を担うのが、森林総合研究所の森林気象を中心とした研究グループです。森林総合研究所内の本所-支所間にまたがる複数の研究室では、フラックス・気象観測を主な目的とした試験地をそれぞれの気候帯や森林タイプに応じた森林に設定し、森林-大気間のエネルギーや二酸化炭素輸送の観測を行っています。観測精度の維持や新たな観測・解析手法に柔軟に対応するため、さらに個別の観測研究の成果を集約し、より広域な森林における推定を行うためには、各観測サイト間の連携を密に保つ必要があります。そのため森林総合研究所フラックス観測ネットワークという名称でこれらの観測研究を束ね、共通の目的と観測項目をベースに地域の特色を加味しながら、観測研究を推進しています。

国際的なフラックスネットワークとの関連

アジアにはAsiaFlux、北米にはAmeriFlux、ヨーロッパにはCarboEuropeなどの地域観測研究ネットワークがあります。これらの地域ネットワークを束ね、全球規模に展開するためのネットワークとして、FLUXNETがあります。FLUXNETは、データベースを構築・管理し、統合解析等の研究推進を行っています。

アジアのAsiaFluxは、日本のJapanFluxや、韓国のKoFlux、その他アジアにおける観測研究グループから構成されており、FFPRI FluxNetは、日本(アジア)の森林生態系におけて継続的な観測研究を行うグループとして、JapanFlux(AsiaFlux)に参画しています。

フラックスとは ?

フラックスは、単位時間内に単位面積を通って輸送される物質やエネルギーなどの量を意味します。

FFPRI FluxNet ロゴ

FFPRI FluxNetは、主に森林を対象とした二酸化炭素・エネルギーフラックスの観測研究を行っています。このロゴは、日本では森林が主に山地に分布することを考慮して、森林の樹冠と観測対象となる二酸化炭素および水分子をイメージして作成しました。

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連絡先

FFPRI FluxNet運営委員会事務局:

森林総合研究所 森林防災研究領域
〒305-8687 茨城県つくば市松の里1
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