Topics from FFPRI FluxNet

Article: 2017-08-24

大規模な風害からの回復過程で、森林の炭素収支はどう変わったか?

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タワーフラックス観測は変化する森林炭素収支をありのままに捉え、私たちにその実態を見せてくれます。

北海道地方は2004年の秋に大きな台風に襲われました。 その時札幌地方気象台で観測された瞬間最大風速 50.2 ms-1 は、観測史上1位の記録を更新しています。 道南を中心とした地域が強風に見舞われ、ここ札幌森林気象試験地でも多くのシラカンバやミズナラの木に根返りや枝折れなどが発生し、 観測タワーも倒れるなど、測定対象の森林生態系や観測システムに甚大な被害が生じました。

それまで札幌サイトにおける年間の炭素収支は、概ね 3~4 MgC ha-1 y-1 の吸収で推移してきましたが、 この被害後は放出に転じ、風害から8年が経過した2012年でも、まだ森林から炭素が放出される状態は続いていました。 札幌サイトで経験しているような、森林破壊後に長期にわたり炭素収支が回復しないような事例は、これまであまり報告されていないため、そのメカニズムの解明が急務となっています。 タワーフラックス観測や毎木調査といった地道な観測を継続するとともに、陸域生態系モデルを使ったメカニズムの検証・解明を優先課題として取り組んでいます。

長期タワーフラックス観測で得られた札幌サイトの年・月炭素吸収量の推移

札幌森林気象試験地 (SAP) サイト情報

Article: 2017-07-07

春のアカマツ林の地面からは強く揮発性化合物が放出されていた

森の香り成分として親しまれるα-ピネンなどの森林起源の揮発性化合物(BVOC)は、NOxと光化学反応すると光化学スモッグとなるオゾンやエアロゾルを生成し、植物や私たちの生活に影響を及ぼします。オゾンには、アジア大陸から越境してくるものと国内のBVOCから生成されるものがあり、その割合を明らかにするために、国内の森林のBVOC放出特性と放出量の評価が急務となっています。

ここに紹介する研究では、従来の土壌呼吸量の測定手法を応用して、α-ピネン土壌放出量の多点観測手法を開発しました。その結果、春季の林床には落葉の堆積量の大小に関係なく、高い放出を示す地点が多数出現していました。この高い放出は、落葉より下の根圏からは発生しなかったため、冬季に花芽を覆っていた樹脂が落葉表面に付着して強い放出源となっている可能性が考えられました。α-ピネンについて、春季を平均した土壌からの放出量の測定値は、既往の報告にある群落放出量の3~5割を占める大きな値でした。この結果は、これまで考慮されていなかった土壌からの放出が、α-ピネンの放出源として重要であることを示しています。

このような研究は、オゾンやエアロゾルの原因となる森林のBVOC放出量を高精度に推定することに貢献します。森林総合研究所は多様な森林植生にCO2観測タワーサイトを持つことから、これらのサイトにも観測対象を広げてBVOC観測網の構築を進め、さまざまなBVOCの放出源の解明を行っていく予定です。

富士吉田森林気象試験地 (FJY) サイト情報

Article: 2017-05-19

上空からみた春の札幌サイト

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札幌のシラカンバ・ミズナラ林では、森林の状態を把握するため、ドローンによる空撮を行っています。
また、ドローンを活用した気象観測を行うための方法も検討中です。

札幌森林気象試験地 (SAP) サイト情報